みんながみんなスマホを持つようになり、デジタルカメラそのものの売上は全盛期と比較したら恐ろしく減少している。2010年頃は出荷額が1.7兆円に出荷台数は1億2,000万台というデータがあり、コロナ禍の2020年には6,000億円の800万台未満というものまである。それがじわじわと増えてきて、2024年には8,247億円の市場にまで回復したと言われている。信頼できるデータ(CIPA)を参考にしたけど、どこか間違っていたらごめんね。それはともかく、肌感としてもデジカメがまた売れているのは間違いないと思う。コンパクトで高画質なカメラやレトロなカメラが比較的ライトな層やアマチュアに受けて、高画素ハイスペック機はハイアマチュアやプロが買い漁っている感じ。富士フィルムの『X half』は、スマホより高画質でレトロ、それでいてSNS向けの機能が多い。そりゃ売れるよなと。

元々富士フィルムのデザインや画の色味、往年のフィルムを再現して見せるフィルムシミュレーションは人気が高い。10万円程度の価格で240gの軽さ。そして880枚も撮れるバッテリー。鞄に忍ばせておいて、ふとした瞬間に取り出してすっと撮れる。ただまあ、個人的にあると便利だなとは思うし、トータルで見ていいカメラだと断言もできる……けど、他に普段から持ち歩くカメラがあるとそこまで必要でもない。あくまでスマホからのステップアップ、もしくはスナップ用のサブカメラとしての魅力が強く、それが全てだとも感じている。
コンパクトでレトロな外観のSNSに向いたカメラが欲しいというニーズには答えている。しかしコンパクトさだけであったり、レトロな外観だったり、SNS向けの写真を手っ取り早く撮りたいといったように、自分の目的やある程度の知識があれば、選択肢から外れやすいんじゃなかろうか。それでも必要以上に機能が盛りだくさんで無駄に高くなる道を選択せず、需要と供給を考えて必要な要素だけを求められる価格で出すという戦略は賢いと思う。これが15万でAPS-Cサイズだったり、更に4000万画素だったりしたら20万クラスになるかもしれない。そうなると一眼を買いたくなる。
ちなみに同じ富士フィルムで今オフィシャルのリファービッシュ品を見てみたら、『FUJIFILM X-M5 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZレンズキット』が15万円を切っていた。もうちょっと高く重くなってもいいから、より綺麗な写真を撮りたいという人はこっちを買ったほうが幸せになれる。10万円前後の予算でミラーレスという選択肢なら、APS-Cもマイクロフォーサーズも新品で色々と見つかる。レトロ感が欲しかったらオリンパス(OMシステム)かルミックスくらいだけど、ロングバッテリーなボディはない。となるとやはり、この性能と価格設定は絶妙なんだなあと感心する。
じゃあコンデジだったらどうだろうかと調べてみたら、むしろこっちのほうがライバル不在といった様子。センサーサイズを1型以上にしたらほぼ選ぶ余地がなかった。レトロデザインもなく、安いコンデジかちょっといいコンデジがある程度。恐ろしいことに、レトロでレンズ交換も考える必要もなく、10万程度で買えるコンデジそのものの選択肢が『X half』に集中してしまっている。つまり、『X half』のようなカメラが欲しいと考えた時点で、「あ、こういうカメラは他にないんだ」という結論に辿り着き、ミラーレスにまでは手を出せない(そこまでは興味がない)層が買う。これは本当に恐ろしい。
いっそのこと各メーカーは1型センサー、2,000万画素以内でコンパクトかつ、レトロなコンデジを10万以内で出す方向にシフトした方が安定した利益を確保できるのでは……。仮にその方向で突き進むとしたら、元々コンパクトで強力な手ブレ補正機能を持つマイクロフォーサーズが有利だけど、だったら最初から『PEN E-P7』の後継機を作ったほうが手っ取り早い。というか作ってほしい。いや、『X half』に興味を持ったひとはまず『PEN E-P7』を手にとってほしい。そしてコンパクトさを重視したマイクロフォーサーズを復活させてくれ。頼む。ルミックスでもいいから!
脱線したけど、SNSメインなら『X half』は本当にいいカメラだと思う。