色々と変わったものやコスパの高いもの、良くも悪くもとんでもない商品を出したりするドン・キホーテが一眼っぽいカメラとしてOptical 10という新商品を出した。カメラ好きとしてはどんな商品か気になってスペックを見てみたら、これが想像以上に酷いデキだった。3万2978円という価格でも高いと感じるほどで、こんなものを買って「一眼ってこんなもんなんだ」と誤解されたくない。
一眼に興味はあるけど、よくわからない。スマホよりいい写真が撮れるらしいから欲しい。そのくらいの認識で、もし今このOptical 10を買おうか悩んでいる人が居たら、まず最低限の知識を身に着けてほしい。出来る限り簡単に説明するから、その説明を見て理解した上で、どうしてこのカメラが駄目なのか。それでも買いたいのかと自問自答してほしい。このカメラのライバルは古いスマホだから。
カメラや人の目は、光がないと何も映し出せない。明るいところだと何でも見えるけど、明るすぎると眩しすぎて何も見えないし、暗すぎるとぼんやりとしかものが見えない。その光を捉えて処理する機能がイメージセンサーで、簡単に言えば大きければ大きいほど多くの光を取り込める。つまりセンサーが小さいと、うまく光を取り込めなくてきれいな写真を撮るのが難しくなる。
昔のいわゆるガラケーとかに付いていたカメラは画質が悪かった。それはカメラそのものやレンズの質、カメラ機能自体の性能も原因ではあるんだけど、イメージセンサーやそれに準ずる機能が現代と比較して低レベルだった。だからカメラはオマケで、きれいな写真を撮りたい人はデジカメを買っていた。でも今はスマホのカメラが高画質になって、デジカメを必要としなくなった。
それでどうして画質が上がったのかっていうと、スマホにもデジカメ同等のイメージセンサーを搭載するようになったからなんだよね。だからうまく光を取り込めて、ついでにその光を処理したり写真そのものをうまいこと加工したりする機能まで発達したもんだから、はっきりいって丁寧に現像(色味の調整や補正)しない場合は、スマホのほうがいい感じに映える写真を撮れるようになった。
さて、このドンキが出したカメラ。センサーはSONYのIMX258を使っている。一般的な比較的きれいなデジカメのセンサーサイズが1型と呼ばれるものだとしたら、これは1/3.06インチサイズ。一般的な良いデジカメの三分の一程度しかない。ちなみにスマホでもカメラが売りの機種であれば、1型のセンサーを搭載していることもある。つまりこのカメラはスマホ以下の画質だったりする。
そこで、わざわざスマホとは別にお金を出して、スマホ以下のカメラを買いたい人がいるのだろうか? という素朴な疑問が湧き上がる。もちろんカメラはセンサーサイズだけで決まるものでもないので、本格的なカメラっぽい見た目と、スマホよりはいくらかマシに見えるレンズで撮影体験を楽しみたいという理由があれば止めはしない。もしそれが家族だったら全力で止めるけども。
もし「新品じゃなきゃ嫌だ! 誰も触ってないカメラがいい!」という譲れない理由があればどうしようもないけど、中古でもよければ型落ちの一眼を買ったほうが撮影を楽しめる。現時点での価格コムにある中古相場でいえば、ソニーのα NEX-5K、ニコンのD3200、キヤノンのEOS Kiss X50、オリンパスのPEN Lite E-PL2あたりは、このカメラの代金を出せばレンズと一緒に買える。

特にD3200は2416万画素もあって、今でも全く問題ない。α NEX-5KやPEN Lite E-PL2については画素数こそ劣るものの、今でも現役のマウント(カメラにつけられるレンズの規格)だから、別のレンズを買って試して、物足りなくなったらボディ(カメラ本体)を買い替えることでレンズを使い回せる。つまりカメラやレンズそのものが無駄にならなくて済む。これは結構重要なことだと思う。
とはいえ中古のカメラというものは、知識がないと壊れかけの状態で買ってしまうこともしばしば。それでも動作確認済であれば、少なくとも新品ででかいだけの一眼風カメラを買うよりは良い。ドンキの店頭で本格的なカメラに見えるこの商品を見かけて、購入しようか悩んでいる人に、カメラ好きな一人のおっさんとして言いたい。これはカメラの形をしたドライブレコーダーだと。
ちなみに一眼のような撮影体験を得られるデジカメとしては、ネオ一眼と呼ばれるジャンルがある。それはこのカメラみたいにレンズが一体化していて、そこまでイメージセンサーも大きくない。でも中古相場を見ると、このカメラよりはイメージセンサーが大きいものがいくつもある。このドンキのカメラで褒められるところを挙げるとすれば、それは新品で買えることだけだろう。
もし家族や親戚が買おうとしていたら、中古でよさげなカメラを代わりに探すか、いっそのこと自分があまり使っていないカメラをあげると思う。せっかくカメラに興味を持ったのに、それが微妙な体験として記憶に刻まれてしまったら残念だから。ただ、何らかのテクノロジーで恐ろしく素晴らしい写真を量産できるとんでもないカメラに仕上がっていたら、その時は心の底から謝りたい。でも、
何も知らない親が子どもに買って、子どもががっかりするのだけは本当に見たくないと思う。